世界で最も魅力的な企業は?

MBAホルダーたちの間で最も人気のあるアメリカ企業は昨今、投資銀行でもコンサルティング会社でもありません。ユニバーサム社が発表している「United States of America’s Most Attactive Employers━━MBA student 2015 」のランキングでは、以下のようになっています。

1位 グーグル
2位 アップル
3位 マッキンゼー・アンド・カンパニー
4位 ウォルト・ディズニー
5位 アマゾン・ドット・コム

ちなみに、グーグルは同じユニーバーサム社が毎年発表している「世界で最も魅力的な企業」ランキングでもトップ。同調査は世界トップクラスの大学生20万人以上を対象としているそうですが、エンジニアリング・IT専攻の学生ばかりではなく、ビジネスを専攻している学生の間でも、グーグルは最も魅力的な企業に映っているようです。

そんなグーグルの東京オフィスを取材した際の記事がネット上にアップされていたので、ご紹介します。プレジデント・ウーマンの2015年8月7日号に掲載された「働き方革命」というコーナーの「なぜGoogleは、出産してもそんなに働きやすいのか」という記事を転載したもので、実際に取材したのは2015年5月。編集部の企画により、取材・執筆を担当しました。

少々長いので1つの記事が「前編」と「後編」に分割されていますが、「働き方」に興味のある方はご一読いただければと思います。

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ところで、先のユニバーサム社のサイトでは国別のランキングも見ることができます。これによると、日本で最も魅力的な企業ランキング(2014)は以下の通りです。

<理工系専攻>
1位 パナソニック
2位 ソニー
3位 トヨタ自動車

<ビジネス専攻>
1位 みずほ銀行
2位 三菱商事
3位 三井物産

多少順位の入れ替えはあれど10年前、いや、20年前でも同じかもと思うラインナップで、考えさせられます……。

 

ウンベルト・エーコの死

イタリアの作家で哲学者でもあるウンベルト・エーコ氏が日本時間の20日朝、亡くなりました。84歳でした。

訃報の多くは、彼のベストセラー『薔薇の名前』に触れています。私がこの小説に興味を持ったのは、黒川紀章氏の人生を調べていた時でした。彼の著書『新・共生の思想』には、こんな記述があります。

”ウンベルト・エーコの衝撃的な小説『薔薇の名前』は、最後に引用されている12世紀のベネディクト派の学僧ベルナール・ド・モルレーのラテン語の六脚詩、「昨日の薔薇は散り去りて/虚しき名のみぞ残りける」からとられている。これは中世最大の哲学論争であった「普遍論争」の現代版としてのエーコの記号論的挑戦ともいえる。”

小説の舞台は14世紀、北イタリアの山奥にある修道院。そこで奇妙な殺人事件が相次いで起こり、フランチェスコ派の学僧バスカヴィルのウィリアムが弟子を伴い捜査にやってきます。真相を探るうち、彼らは本堂にある迷宮図書館に隠してあった、ある書物の存在にも気づきます。問題の書物とは、アリストテレスによる『詩学』の「第2部」。そこには「笑い」について書かれていました━━。

「えっ、笑いですか?」と思いますよね。気なる方はどうぞ、小説を読むか、ショーン・コネリー主演の映画をご覧になって下さい。

ともかく『薔薇の名前』は、この禁書を巡って次々と起こる殺人事件の謎を解くミステリー。実在の人物や教会建築、哲学、政治学、薬学等からの引用や暗喩がいたるところに散りばめられているため、予備知識があった方が知的好奇心をくすぐられるのは間違いないでしょうが、あまり難しく考えずとも、物語として十分に楽しめます。

黒川氏はなぜ、この『薔薇の名前』が気になったのでしょうか?この点に関して、彼は先の本で次のように述べています。

”ウンベルト・エーコの1600万人の読者のすべてが、エーコの知的な引用や暗喩の記号を読解しているとは思わない。『薔薇の名前』の出版ののち、多くの評論や解釈の論文が書かれたのを見てもわかるように、その読解の仕方はそれぞれ異なるのである。普遍性に代わる多様性、曖昧性、両義性こそ近代主義のロゴス中心主義を超える新しい時代の質だといってよいと思われる。(『新・共生の思想』より)”

ポイントはエーコの知的な引用や暗喩の記号を理解せずとも1600万人の読者がそれを読んだ、という点にあります。黒川氏はそこに時代の風を感じ取っています。そして、「共生の思想」に基づき、自らも多様性、曖昧性、両義性を含む作品を作り出そうとしていきます。

”ローカルであると同時に世界的でなくてはならないのである。国家も組織も文化も異質な存在を排除し、求心的な発展をたどるときには斜陽化する。常に異質な要素を取り入れ、中心の構造をずらしていくことが必要なのだ。(同上)”

「共生の思想」を今の言葉で言い換えるならば、「diversity and inclusion」に近いでしょう。ひょっとすると、建築というよりは、社会や組織にこそ応用可能な言葉だったのかもしれません。

私自身がウンベルト・エーコと聞いて思い出すのは、『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』(阪急コミュニケーションズ)です。

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フランスの劇作家、ジャン=クロード・カリエールとの対談集ですが、今読み返しても、エーコ氏はなかなか面白いことを言っています。

”バートランド・ラッセルの哲学はハイデッガーの哲学ほど多くの解釈を生みませんでした。なぜでしょう。それはラッセルが非常にクリアでわかりやすいのに対し、ハイデッガーは難解だからです。どちらか正しくてどちらかが間違っているという意味ではありません。私自身は、二人とも警戒しています。ただ、ラッセルは馬鹿なことを言うとき、馬鹿なことを言っているとはっきりわかるんですが、ハイデッガーの場合は、わかりきったことを言っているのに、我々はそれに気づけなかったりするんです。歴史に残り、長持ちするためには、つまり難解でなければいけないんです。ヘラクレイトスはそのことをすでに知っていました……。”

人間という、この愚かしくて愛らしい生き物に対しては、こんな風に語っていました。

”人類はまさに途方もない存在です。火を発見し、都市を建設し、見事な詩を書き、世界を解釈し、神話の神々を絵に描きました。しかし同時に、同胞を相手に戦争を繰り返し、互いに騙しあい、環境を破壊し続けてきました。知的で崇高な美徳と低俗な愚行を合わせて評価すれば、中くらいの点数になります。したがって、愚かしさをテーマに語ろうとは言ったものの、これは、半分天才で半分馬鹿という、この人間という存在に対するオマージュなんです”

エーコ氏は偽りや人間の誤りに関する希少な書物を収集していたそうですが、亡くなった後、それらの書物はどうなってしまうのでしょうか。

ご冥福をお祈りします。

絶滅して欲しくない仕事

頭がボーッとしてきたなと思ったら、花粉の季節が近づいています。<いつものことじゃないか>と、ツッコまないでください……。

このところ、1週間を振り返って金曜日にブログを書くことを自らに課しています。とはいえ、「ねばならない」と思うと辛くなるので、あくまでゆる〜く。取材でお目にかかったけれども長らく会っていない方や、お互い、忙しくて会えない方に仕事の近況報告をするつもりで書いています。

というわけで、本日ご紹介したい仕事はこれです。

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写真は、「しんきん経営情報」というA5版大の小冊子です。そこにコラムを書き始めてから5年目になります。きっかけは、2010年7月からダイヤモンド・オンラインで「絶滅危惧種なお仕事ガイド」という連載シリーズを書いたことでした。

当時、私自身が書いたシリーズの説明にはこうあります。

「もう食えないかも」「このままだと絶滅」と言われる産業に従事する人々のなかにも、実は意外にしぶとく生きている人たちがいる。日本一でもなく、世界一でもない、「最後の下駄屋になること」を目指して働く職業や人々を追いかけ、「崖っぷちの中に見える希望」を探る。

先行きが見えないのは、「モノ書き業」も同じでした。「それでもどこかに希望はあるはず」と思いたくて、斜陽と言われて久しい産業や仕事に従事する人たちに、あえて話を聞きに行っていたような気がします。

オンラインの連載は当初の予定通り9回で終了しましたが、それを読んだ別の部署にいる編集者から、「記事を『しんきん経営情報』に載せたい」と声がかかり、場所を変えて連載を続けることになりました。(ちなみに、『しんきん経営情報』は全国信用金庫協会が監修していますが、編集・発行はダイヤモンド社です。市販はされていません)

タイトルと中身をマイナーチェンジした連載は、2011年4月号から2014年3月号まで続きました。月1回の発行ですから、単純計算すると12×3年+9=45回。よくぞ、これだけ絶滅危惧種な仕事があったものだ、と思います。

取材先のほとんどが60歳以上。鉛筆を作っている町工場を突撃で訪問したりもしましたし、日本全国、どこの街にでも1つや2つはあるような、小さな店の店主さんにも話を聞いたりしました。あてもなくぶらぶらと街を歩き、気になるお店があれば入って、商店主と話をし、「この人なら」と思う方に取材を申し込んでいました。「絶滅危惧種とは失礼な!」と叱られたこともありますが、たいていは、笑って受けてくださいました。

そんな「絶滅〜」シリーズを終えた後、2014年4月号から始めたのが、写真にある「笑う門には”客”来る!?」です。ダジャレ・マーケティングと銘打ってはいますが、専門家ではありませんから、ただひたすら楽しんでもらうために書いています。ともするとコラムではなく記事になってしまうため、コラムニストとしてはまだまだ修業中、という感じです。

「しんきん経営情報」と言えば、これだけはお伝えしたい、と思ったことがあります。それは紙媒体ならでは、の校閲力。毎回、「そんなところまで!」と思うほど細かなチェックをしてくださるので、非常に助かっています。

媒体の信用度は校正・校閲力で決まるもの。ドジでおちょこちょいな筆者を助けるためにも、ぜひ、優秀な校閲さんが活躍できる世の中であって欲しい、と願っています。

最後に、もう1つ。

たまたまですが、同じ2016年2月号で「トップインタビュー」のコーナーも担当しました。申し込んだのは編集部で、伺ったのは日本色材工業研究所という会社です。

http://www.shikizai.com/japanese/

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国内外のメーカーに化粧品の量産技術等を提供しているBtoBの会社で、女性の活躍を推進するため「ポジティブ・アクション宣言」もしています。社長の奥村浩士さんに聞いてみたところ、やはり、娘さんがいらっしゃるとのこと。女性活躍に理解ある経営者にはたいてい、バリバリ仕事をしている娘さんがいるものなのです。

暗闇の中での会話

日経Bizアカデミーに連載中の「ダイバーシティに挑む」で、ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン代表の志村真介さんにインタビューしました。記事の中身はこちら(全文を読むには日経IDが必要ですが、IDは無料でどなたでも取得できます)をご覧ください。

今回は、その「こぼれ話」を中心にご紹介します。

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この写真、なんだかおわかりになりますか?

恥ずかしながら、書いたのは私です。しかも、何も見えない真っ暗闇の中で。

すでにご存知の方も多いかと思いますが、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」とはアテンドと呼ばれる視覚障がい者の案内で暗闇の中へ入り、そこで様々なアクティビティを体験できる一種のエンターテインメントです。見知らぬ人と出会い、語り合うことのできる、貴重な機会でもあります。

思い切って申し込んだのは、1月の土曜日に開催された「一期一会」というイベントでした。この時にはすでに志村さんをインタビューしようと決めていましたから、個人的にそのリサーチを兼ねて行ってみるつもりでした。

正直に言いますと、金額にはやや躊躇しました。参加費は大人5000円、学生3500円です。

「どうしようかな」と迷っていると、参加したことのある友人が「ぜひ、行ったらいい。絶対に後悔しないから」と、背中を押してくれました。

一緒に参加したのは、たしか7人だったと思います。地方からわざわざ、「一期一会」のためだけに上京して来た人がいました。年齢的には若く、男女比率で言うと、女性が多いかなというくらい。私のように初めての人もいれば、「このイベントが大好きなんです」というリピーターもいました。

漆黒の暗闇で足を一歩を踏み出すのは、思ったよりも勇気のいることでした。入る前に、1人1本ずつ自分の身の丈に合った杖(=白杖:「はくじょう」と読みます)を選んで持つのですが、杖がこんなに頼りになると感じたのは、生まれて初めてのことでした。

オーボエ奏者でもあるアテンドの方と話した、こんな会話が印象に残っています。

「オーケストラで演奏する際には、どうやって演奏開始のタイミングがわかるのですか?」

「いい質問ですね。どうすると思います?」

「指揮棒の音か何かで気づくのでしょうか?」

「いいえ、周りの人の呼吸を感じて、それに合わせるんです」

暗闇の中で書き初めをするのは大変でした。「なんでもいいです。漢字一文字を書いてください」と言われ、思い浮かんだのが「飛」という文字。

渡された色紙の大きさを手の感触で確かめ、最初の筆をどこに落としたらいいか、の見当をつけます。私の場合、少し左側に寄ってしまったようです。途中で書き順がわからなくなったりもして、ふだん、自分がいかに視覚情報に頼っているのか、がよくわかりました。

暗闇の中で文字を書くには、勢いが大事です。それと、少しばかりの度胸もいります。ご覧いただくとわかりますが、色紙よりもだいぶ小さくなってしまった文字が、自分自身の臆病さをよく表しているな、と思います。

志村さんへのインタビュー、後編は2月18日(木曜日)にアップします。毎週木曜日の連載ですが、11日はお休みのため、少し間があきます。次回分も、ぜひ、忘れずに読んでいただきたい記事の1つです。