女性社長の名前、6年連続で「和子」がトップ

関東甲信越はようやく梅雨明け宣言し、夏らしいお天気になってきました。

7月もあっという間でした。振り返って印象に残っているのは、NIKKEI STYLEに連載中の「キャリアの原点」で、大塚家具の大塚久美子社長にインタビューしたことです。

正直に言うと、あまり良くないタイミングかなと思っていました。会社の業績がいい時に出てくれる社長はたくさんいますが、悪い時に取材を受けてくださる方はそう多くありません。改めて、取材を受けてくださったことに感謝するとともに、生身の人間としての大塚久美子さんの肉声を感じていただけたら、と思っています。何年後かに再びお目にかかることができたら、また、違うお話が聞けるかもしれません。

ところで、久美子社長の(上)のリードで東京商工リサーチのデータに触れました。ホームページをご覧いただくと、2016年6月16日付のリリースとして、2015年「全国女性社長」調査の結果が載っています。これによると全国280万社のうち、女性社長は調査を開始した2010年以降で最多の33万2,466人に上り、5年間で1.6倍に増えたそうです。

リリースにあった分析では、女性社長が増加した理由は以下の3点。
【1】政府が成長戦略の柱のひとつに「女性活躍推進」を位置付けたこと
【2】少子化を背景に、能力が高くて事業意欲のある娘に経営を託す中小企業が増えている
【3】女性の「プチ起業」を支援する環境が改善され、自治体や金融機関による創業融資の実績が伸びている

とはいえ、産業別では宿泊業、飲食業、介護事業、美容関連、教育関連などの「サービス業」が4割を占め、「女性社長率」で見ると不動産業が21.3%でトップとのことですから、定性的にはあまり変わってはいないようにも思えます。

個人的に気になったのは、この調査で女性社長の名前を調べている点でした。1位は「和子」で、しかも6年連続トップ!

2位が「洋子」、3位が「幸子」と続きます。(しかも、上位3位までは前年と同じだそう)

上位20位までを見ても「子」の付く名前が大半とのことですから、これはたまたまそういう名前が流行った時代に生まれた人が社長の年齢になっている、ということかもしれません。と思ったら、リリースにもこう分析してありました。

「20位以下では、30位に『由美』、36位に『直美』、37位に『真由美』、41位に『和美』、44位に『薫』が名を連ね、世代交代の兆しもうかがえる」

ちなみに、20位以内に唯一入っている子が付かない名前は19位の「明美」。「久美子」は7位でした。

調査の主旨からすると、名前に関してはおまけというか、かなりどうでもいい情報のような気もしますが、こういうなんてことない話ほど気になってしまいます。こんなんだからニュース記者には向かなかったのね、とつくづく思います。

「ポケモンGO」で黒川GO!

ヘンなタイトルだと思った方も、どうぞ我慢して読んでください。

以前、東京・下北沢の本屋B&Bで開かれた出版イベントで、ジャーナリストの佐々木俊尚さんから「黒川紀章さんはなぜ、物理的に動くことにこだわったの?」と聞かれて、うまく答えられませんでした。佐々木さんはデジタルが高度に発達した21世紀には、物理的に移動しなくても、様々なツールを使ってネットワーキングしながら情報収集をしたり、働いたりできるという立場をとられていましたので、「動くこと」そのものに価値を置いた黒川さんとは、真逆の考え方でした。

私はこの時、「黒川さんは車が好きで、カプセルを自動車のように産業化したいと考えていたからではないか」と答えた記憶がありますが、改めて黒川さんと研究者チーム「グループ2025」による『TOKYO大改造』(徳間書店)を読み直し、あの答えは不十分だったと反省しました。補足の意味も含め、ここにもう一度、黒川さんの考え方を説明しておきます。

黒川さんの都市論は「ネットワーク都市」を基本としています。国土計画ではよく「集中か分散か」が議論の焦点になりますが、黒川さんの考えは、このふたつは対立する概念ではなく、「両立できる」というところから出発しています。この際、重要なのが人の動きです。つまり、黒川さんのネットワーク都市は、人間が都市の間を自由かつ頻繁に移動することによって成立しているわけです。

この頻繁に移動する人たちを、彼は「ホモ・モーベンス」と呼びました。ホモ・モーベンスとは「ホモ・サピエンス(考える人)」「ホモ・ファーベル(作る人)」をもじった造語です。

「ホモ・ファーベルの概念が工業化社会の原理につながるのと同様、ホモ・モーベンスの概念は情報化社会の原理へとつながる」と、黒川さんは説明しています。工業化時代には、より速く目的地へ到達すること、あるいはより大量かつ効率的にモノを運ぶことが重要でしたが、情報化社会では必ずしもそうではない、と彼は考えたようです。

「交通機関の発達だけで、現代社会の流動性を説明することはできない。情報化社会においては、移動すること自体が大きな価値を持ち始めた、と考えるべきだ」

では、なぜ「移動すること」が大きな価値を持つのでしょうか? 黒川さんは以下のように説明しています。

「移動することは選択を可能にする。自分の個性、価値観に合わせて、生まれた所にはないものを選び取ることができるようになる。より選択性の高いことを、現代人は豊かさと感じるのである」

「動くこと」はおそらく、黒川さんにとって「生きること」と同じくらい、重要なことだったのではないでしょうか。若い頃の「カプセル宣言」から一貫して、彼は個性を重んじ、「選択の自由」に価値を置く主張をしています。個々の言動に関して細かな矛盾点や疑問点はあれど、私が黒川さんの考え方に基本的に賛同できるのもこの部分です。21世紀の現実においてさえ、人は生まれた環境や風土から完全に逃れることはできないわけですが、それでも、目指す理想はここにあると思います。

ところで、黒川さんのネットワーク都市論はふたつの大きな前提の上に成り立っています。ひとつは情報化社会、もうひとつは、それぞれの都市が、文化的アイデンディティを確立していることです。情報化社会はすでにやってきているのに、都市の文化的アイデンティティがいっこうに確立されていないことを懸念していた彼が晩年、自らの主張を訴えるために起こした行動が選挙への立候補だったと思っています。

残念ながら、その真意はあまり伝わってはいないようです。

ちなみに、黒川さんが生きていたら、「ポケモンGO」の登場を大いに喜んだことでしょう。「ポケモンGO」は人の移動を促すアーキテクチャーであり、現実の都市を多義的に読み解くことができる可能性を持つゲームですから。あのような拡張現実はいかにも黒川さん好みですし、勢いあまって「黒川GO!」を作っちゃうくらいのことは、したかもしれません。

「ヘンな人」疑惑

取材の帰り、ある人にこう言われた。

「ああいうタイプ、好きでしょ」

書く対象として「興味がわくだろう」という意味だ。自分ではピンと来なかったので、こう尋ね返した。

「ああいうタイプって、どういうタイプですか?」

「うーん、つまりヘンな人」

好きであれ、嫌いであれ、人間は自分と似た相手に興味を持つ。

<それってすなわち、私がヘンってことなのだろうか?>とぼんやり考えていたら、いつの間にか6月が過ぎ、7月を迎えた。

痛ましいニュースばかりが目に飛び込んでくる。

こんな時、人の心を和ませる言葉を持っている人がうらやましくなる。

いずれあの誤解を解かなくては、と思う。

*写真は埼玉県深谷市を訪れた際、道端に咲いていた花です。本文とは関係ありません。

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